オーリキュラのある部屋

 サクラソウ科サクラソウ属のオーリキュラは、ヨーロッパのアルプスを中心とした山地に自生するプリムラ・アウリクラとプリムラ・ヒルスタが交雑して生まれた植物で、十六世紀後半に英国にもたらされ、以降300年間、熱心な園芸家(フローリスト)たちにより育種がすすめられた。やがて「ショウ・オーリキュラ」が完成するが、これは当時の西欧のあらゆる園芸植物の中でも、もっともその時代の求める理想美に近づいたものであった。ちょうど同じ頃、江戸では同じサクラソウ属の桜草が 改良されたのと好対照である。形は完璧に近いほど幾何学的な円環状、そして黄色や赤、紫の他に緑色や灰色といった他の植物には見られない色彩 をもち、葉や花弁に付着する粉が色彩的効果を挙げる。左側の鉢植えはショウ・オーリキュラのグレイ・エッジド系、隣は同じくショウ・オーリキュラのグリーン・エッジド系。本の画像は十九世紀初頭にロンドンで刊行された有名な植物図譜「フロラの神殿」よりオーリキュラの図を反映させたもの。壁の絵はもともと私の手描き画を3Dに反映させたもので、アルパイン系オーリキュラ。植物も本も鉢もすべて本物ではない。花は数百倍に拡大しても正確なように雄蕊や雌蕊もきちんと配列してある。