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 キンポウゲ科は非常に大きなグループで、世界中に分布しています。食用になるものは少なく、有毒の種類が比較的多いのですが、その反面薬草もまた多いのも事実です。いっぽう鑑賞に適する種類はとても多く、アネモネ、フクジュソウ、ミスミソウ、ラナンキュラス、サラシナショウマ、トリカブトなどがよく栽培されます。フクジュソウは江戸時代に育種が進んでたくさんの品種が生まれましたし、ラナンキュラスはヴィクトリア朝英国で「フローリスツ・フラワー」の一つとして改良が進みました。 もともとボタン、シャクヤクやシラネアオイも含まれていましたが、今では別の科に分けられています。ここに挙げている種類は春早く咲き、他の植物が茂る頃には休眠に入ってしまうものも多く、よくはかない青春に例えられます。
 
 英語で「Wind flower(風の花)」と呼ばれ、風に揺られ散ってゆくはかなさを、青春のはかなさにたとえられますが、花弁に見えるのは実は蕚です。ユーラシアから北米まで分布していて、たくさんの種類がありますが、中でも春のアネモネ・コロナリアと秋のシュウメイギクがよく栽培されます。しかしもっと小さな可憐な種たちのファンも多く、春を代表する山草のひとつです。全般的に花付きが良くないのが難点といえます。
 
ユキワリイチゲ
アネモネ・アペンニナ「ペトロヴァク」
アネモネ・アペンニナ・アルバ
オネモネ・ラヌンクロイデス
Anemone keiskeana
A. apennina
A.apennina alba
A. ranuncloides
 日本の太平洋側山地に産するアネモネ。葉はイチゲというより、ミスミソウのような感じ。春早く開くので、「雪割」の名がある。  イタリア、アペニン山脈に産するアネモネ。葉はしまり、ほっそりした草姿で美しい。  A.アペンニナの白花品種。形質は変わらない。  アネモネでは極めて数少ない黄色花の種で、八重咲きの品種もある。他種に比べやや遅咲き。
 
アネモネ・トリフォリア アネモネ・カウカシカ イチリンソウ アネモネ・ブランダ
A. trifolia
A. caukasica
A. nikoensis
A. branda
 「トリフォリア」とはラテン語で「三つの葉」。確かにミツバそっくりの葉を持つアネモネ。
 コーカサス山脈に産する。A.ブランダに非常によく似ているが、はるかに繊細。
 日本特産種。ふつう一つの花梗にひとつの花をつけるのでこう呼ばれるが、写 真のように二つ付けることもある。花は比較的大きく、見ごたえがある美しいアネモネ。
 園芸店でもお馴染みの球根植物。品種も多く、白、ピンク、藤、紫など色の変異も多い。この類の中では多花性で、一般 好みのする花。
 
キクザキイチゲ「雪の精」
キクザキイチゲ 八重半葉化花品種
アネモネ・ネモロサ
アネモネ・ネモロサ 八重葉化花品種

A. pseud-altaica

"Yuki no sei"

A. nemorosa

 別名「キクザキイチリンソウ」。日本特産で、日本海側の山地に生えるイチゲ。雪が解けるとすぐに芽を出し開花する。この品種は純白で花も大きくしかも八重咲きで見ごたえがあるが、普通 はピンクや藤色の花が多い。濃い紫もある。大きな群落を作るが、雪の少ない当地で育てるには少しコツがいる。

 

 八重咲きで半葉化する面白い品種。ニリンソウやA.ネモロサにも似た品種がある。
 ヨーロッパに広く分布し、古くから愛されて来た。ニリンソウやキクザキイチゲに似て風情があり、「wind flower」の名にふさわしい。ピンクや紫、八重咲きなど、数十の品種がある。
 八重咲きで蕚が完全に葉化する不思議な品種。
 

アネモネ・ネモロサ

アネモネ咲

アネモネ・リプシエンシス ニリンソウ サンリンソウ
A.nemorosa
  A. flaccida A. astolonifera
 雄蕊が弁化していわゆるアネモネ咲きとなったもの。
 A.ネモロサとA.ラヌンクロイデスとの交雑により生まれた種間雑種。花形、草姿はネモロサに似て、柔らかな明黄色が美しい。
 一茎にほぼ二輪の花をつけるので「二輪草」と呼ばれる。柔らかく優しい草姿がよい。上高地にも多く、開花期は短いものの、群生地はたくさんの白い花がとても美しい。地域によりいろいろな変種がある。八重咲きも知られている。
 イチリンソウ、ニリンソウよりもう少し山あいに生える小型の種。四輪草、五輪草というのはないが、九輪草はある。ただしサクラソウの仲間。
 
 
 ラテン名ではAdonis、猪の牙にかかって死んだギリシア神話の美少年の名前が付けられています。ヨーロッパ産の種には血のように赤い花を咲かせるものがあり、その連想からの名ですが、日本の福寿草は豊かな黄金色、いち早く暖かな春の陽光の輝きを花いっぱいに表わして、春の喜びを伝えます。名前もおめでたいですが実際寿命の長い植物で、江戸時代からの品種もいくつか伝えられています。江戸時代後半には育種が進みたくさんの品種がありました。花弁に見えるものは蕚ですが、メタリックな輝きを持ち、花はちょうどパラボラアンテナ状となり、太陽光線を中心に集める作用をします。そこに暖を求めて虫がやって来て、結果 受粉の仲立ちをするという、巧妙な生殖システムです。

フクジュソウ「福寿海」

フクジュソウ「紅撫子」
フクジュソウ 東北産
フクジュソウ 済州島産

Adonis amulensis

"Fukuju-kai"

A.amulensis

"Beni-Nadeshiko"

A.amulensis

Collected form

Tohhoku resion, Japan

A.amulensis

Collected form

Cheju island, Korea

 江戸時代にはたくさんの品種が生まれた。この品種はいつ作出されたか明確ではないが、現在最も広く作られている大輪、八重咲きの優良種。
 古くから伝わる品種で、花弁は切れ込みが入り、メタリックな赤銅色が美しい。
 もともと東北地方に野生のもの。福寿海などに比べ、少し花期が遅い。
 韓国済州島産のフクジュソウ。全体に小型でほっそりしていて、日本産のものにくらべると繊細な感じ。
 
 

 園芸上の通称としていっぱんに「雪割草」の名で知られていますが、学術上のユキワリソウはサクラソウ科サクラソウ属の植物(Primula modesta)です。園芸上での「雪割草」の仲間であるキンポウゲ科スハマソウ属(Hepatica)は、ヨーロッパ、アジア、北米まで十数種があり、特に日本海側に産するオオミスミソウは非常に変化に富み、様々な色合いや花型があります。江戸時代後期にも盛んでたくさんの品種がありましたが、現在再び盛んになって、多数の品種が栽培されており、相当な高価で販売される品種も少なくありません。私の庭のものは、ごく一般的なものばかりで高い品種はありませんが、充分に美しいものです。

 
オオミスミソウ
オオミスミソウ
ヘパティカ・アメリカナ
Hepatica nobilis f.magna
Hepatica nobilis f.magna
Hepatica americana

 セツブンソウやフクジュソウなどに次いで春早くから咲き始める。紫色の大輪花。

 

 

 鮮やかなピンクが美しい。
 北米に産する小型の種類で、ユーラシア産のものと大きな違いはない。
 
 
 節分の頃に咲くので「セツブンソウ」。まだ冷たく凍みわたる朝、ガチガチにこおりついていても、陽の光を受けると元に戻り元気に花を咲かせ続ける頑張り屋です。私の庭では フクジュソウ、ガランスス(スノードロップ)、プシキアナ・リウァノティカ、キクラメン・コウムと共に、もっとも早くから花を咲かせます。 日本からヨーロッパまで、5,6種が知られています。
セツブンソウ
エランシス・アルビフロラ エランシス・ヒエマリス

エランシス・トゥベルゲニイ

「ギネア・ゴールド」

Eranthis pinnatifida Eranthis albiflora Eranthis hyemalis

Eranthis x tubergenii "Guinea Gold"

 日本産。関東以西の石灰岩地帯に多い。か細くても、厳しい寒さに決して負けず花を開く。産地によって開花期に差がある。花弁に見えるのは萼。先が黄色い細いものが花弁で、先が青いのは雄蕊。小さくてもなかなかしゃれた配色。種子がこぼれて殖える。

 

 韓国から中国東北部にかけて分布する。中国名「兎葵」。花期はセツブンソウよりもやや早い。丸い葉と赤い花は、キクラメン・コウム。

 ヨーロッパに産する種類で、セツブンソウよりも大柄、茎も太くてしっかりしている感じ。こぼれ種で良く殖える。英国では「Winter Aconitum(冬トリカブト)」と呼ぶ。球根が有毒なため。

 

 

 ドイツのJ.M.C.Hoogにより、エランシス・ヒエマリスとエランシス・キリキクスとの交雑から生まれた種間雑種。濃い黄色の花と赤い茎、赤みを帯びた葉との対比が美しい。花期はE.ヒエマリスより少し遅い。種子はできず、一般 に「ギネア・ゴールド」の名で流通しているものはただのE.キリキクスである事が多く、本物は少ない。

 
 
チチブシロカネソウ
ベエシア・カルサエフォリア

シラネアオイ

シラネアオイ科

シラネアオイ

白花

Enemion raddeanum Beesia calthaefolia Glaucidium palmatum G. palmatum White form

 東日本に多く、秩父の名がついているが秩父特産ではない。一つ一つの花は小さいが、葉も柔らかで春らしい優しい山草。エンゴサクなどとの取り合わせがよい。中国東北部にも分布する。中国名・仮扁果 草。

 花はあっさりしているが、葉は照りのある常緑で美しい心形をなし、細かく鋸歯が入り、葉脈が白く、鑑賞価値が高い。中国名・単葉升麻、定木番。中国雲南省北部、四川省、貴州省をはじめ広西北部、湖南省西部、湖北省などに産する。

 日本特産の一科一属一種。以前はキンポウゲ科に入れられていたが、今日では独立した科とされている。本州中部以北の山地に生える。多雪地帯に特に多い。シラネは日光白根山で、江戸時代からこの山の名花として知られていた。四枚の花弁は桃紫色で大変に美しい。
 美しい純白の品種。丈夫で育てやすい。

 

つづく

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